最高裁判所第三小法廷 昭和49年(あ)2827号 決定 1977年10月14日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人福島敏行の弁護人木内曽益の上告趣意について
所論は、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
被告人福島敏行の弁護人中村信敏、同中村尚彦の上告趣意について
所論のうち、憲法三一条違反をいう点は、実質は単なる法令違反の主張であり、その余は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、いずれも適法な上告理由にあたらない。
被告人福島敏行の弁護人佐伯静治、同久保田昭夫、同相磯まつ江、同加藤康夫、同大竹秀達の上告趣意について
同第一編は、憲法三一条違反をいうが、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二編は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも適法な上告理由にあたらない。
被告人池田正之輔本人の上告趣意について
所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
被告人池田正之輔の弁護人島田徳郎の上告趣意について
同第一点及び第四点のうち、憲法三八条違反をいう点は、記録によれば、久保俊広の検察官に対する供述につき任意性があるとした原判断は相当であるから、所論は前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同第二点のうち、憲法三七条、三八条違反をいう点は、刑訴法二二三条一項にいわゆる被疑者とは、当該被疑者をいい、これと共犯関係にある者を含まないものと解するのが相当であるから(最高裁昭和三五年(あ)第一六九五号同三六年二月二三日第一小法廷判決・刑集一五巻二号三九六頁、同四八年(あ)第一五五二号同四九年三月五日第三小法廷決定・刑事裁判集一九一号二四九頁参照)、別件で服役中の久保俊広につき本件贈賄の幇助の疑いがあったとしても、これを同人以外の者との関係で刑訴法二二三条一項にいう被疑者以外の者として取り調べた点になんら違法はなく、また、同人の所論の供述につき任意性があるとした原判断は相当であるから、所論は前提を欠き、判例違反をいう点は、所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でない。所論は、いずれも適法な上告理由にあたらない。
同第三点のうち、憲法三八条違反をいう点は、記録によれば、所論のような不起訴等の約束は存在しなかったとの原判断は相当であるから、所論は前提を欠き、判例違反をいう点は、不起訴等の約束が存在したことを前提とするものであるところ、原判決は所論のような約束は存在しなかったと認定しているから、この点で前提を欠き、いずれも適法な上告理由にあたらない。
同第五点、第六点、第八点及び第九点は、いずれも事実誤認の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同第七点のうち、憲法三八条違反をいう点は、記録によれば、福島敏行の検察官に対する供述につき任意性があるとした原判断は相当であるから、所論は前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
被告人池田正之輔の弁護人島田武夫の上告趣意について
同第一点のうち、憲法三四条違反をいう点は、久保の取調につき所論のような違法のないことは前記のとおりであるから、所論は前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同第二点のうち、憲法違反をいう点は、憲法のどの各条項に違反するのか具体的摘示を欠くから不適法であり、その余は、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同第三点のうち、憲法三八条違反をいう点は、記録によれば、久保俊広の検察官に対する供述につき任意性があるとした原判断は相当であるから、所論は前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同第四点は、単なる法令違反の主張、同第五点は、事実誤認、単なる法令違反の主張、同第六点は、量刑不当の主張であって、いずれも適法な上告理由にあたらない。
被告人池田正之輔の弁護人沢田喜道、同八島三郎の上告趣意について
同第一点の一のうち、憲法三一条、三四条、三八条一項違反をいう点は、久保の取調につき所論のような違法のないこと及び同人の所論供述につき任意性があることは前記のとおりであるから、所論は前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同第一点の二は、憲法三一条違反をいう点もあるが、その実質は、すべて単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二点は、すべて、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第三点は、量刑不当の主張であって、いずれも適法な上告理由にあたらない。
よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 環 昌一 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顕)